ヒナタノオト
作品展に寄せて

現在、上野の東京都美術館で開催中の「ハマスホイとデンマーク絵画」展。
もうご覧になられたでしょうか。

2008年に日本で初めての「ハンマースホイ」展が、同じく上野の国立西洋美術館で開催されたとき、
日本ではほとんど知られていなかったデンマークの画家の展覧会に、予想を超える来場者がありました。
これを機会に、ハマスホイの絵がだんだんと知られるようになり、12年の時を経て、今回の展覧会が企画されました。

絵の鑑賞に答えはありませんし、ひとつだけであるわけもなく、また、見るたびに見る人の心や経験の変化で印象も変わると思います。
なので、ハマスホイの絵をヒュッゲだと思う人や、不気味だと思う人、都会的だと思う人、さまざまだとは思います、
私自身はそのどれもをそうだとは思わないですし、ましてや北欧のフェルメールだなんてちょっとどうなのかしらと思うのですが(ハマスホイがフェルメールを好きだったかどうかではなく)、どうして惹かれてしまうのだろう、とその答えを探したくなる気持ちは、きっと一緒です。

今回の東京都美術館での展覧会の企画・監修をし、図録の多くを執筆しているのは、萬屋健司さんという山口県立美術館の学芸員の方です。
健司さんとは15年前、2005年に初めてコペンハーゲンでお会いしました。
コペンハーゲン大学に留学をしてハマスホイの研究をコツコツと進めていた健司さんが、「ハマスホイ」と日本語で検索をかけたら、当時、個人的にデンマークのことを綴っていた私のブログにヒットして、メールをくださったのでした。
その直前に、健司という漢字まで同じ名前の弟を白血病で亡くしたばかりでしたので、どこか狐につままれたような不思議な想いを抱きながら、その冬、コペンハーゲンでお会いしたのでした。

暗く長い冬のコペンハーゲンで、誰に頼まれたわけでもなく、自らの研究として日々ハマスホイの一次資料(母親の日記など)を整理し、書き写す日々の中で少しずつ鮮やかに浮かび上がってくる画家の輪郭。
そうして得られた知識をお聞きしながら鑑賞した国立美術館や、デイビッドコレクションでの時間は、今も深く心に刻まれています。
本当に贅沢な宝物のような時間でした。

翌年(2006年)再びコペンハーゲンでお会いした時、2008年に国立西洋で大ハマスホイ展が行われると知らされ、歓喜しました。
大学院生でありながら、日本で最もハマスホイの研究をしている健司さんは、その展覧会でも図録の執筆などかなりの仕事に携わっていました。
けれど、「ハンマースホイ」展を「ハマスホイ」展にすることは大学院生にはできなかったのだと思います。
(デンマークで「ハンマースホイ」と言っても誰のこと?なんのこと?という感じでわかってもらえません)
今回、デンマーク人の発音に近い「ハマスホイ」展になったとき、12年の年月で積み重ねられた健司さんの想いとそれを叶える実績に拍手を送りたい気持ちです。

都美術館での空間構成、そしてところどころに掲示されたフレーズなど、私の想うハマスホイととても近いものでした。
ハマスホイ以外のデンマーク絵画も、とてもよく選ばれた構成です。
ひとりの画家を愛をもって研究し続けたひとの想いが通った豊かな展覧会。
ぜひ、ぜひご覧になってみてください。(早目の方が混雑していなくておすすめです)

長くなりましたね。すみません。
健司さんとの幸せな出会いやハマスホイのことにも拙著「北欧の和み」に綴っています。
あらためて、ぜひお読みいただけましたらとてもうれしいです。

また、このオウンドメディアの前身でもある「光の本」に6回連載いただいた「ハマスホイの部屋へ」もお読みください。
→ click

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ハマスホイの時間
2/8(土)〜2/16(日)
ヒナタノオト

陶 | 田屋道子 ・ キムラヤ ・ 竹口 要
ガラス | 田井将博
木工 | hyakka
染織 | 高見由香
装身具 | 世良 順
刺繍 | 繍 ぬいとり
革 | 谷田貝陵子

只今、金曜日。
明日からのヒナタノオトでの「ハマスホイの時間」展の搬入を行っています。

あと、布類の作品、装身具なども整え、明日の初日を迎えます。
初日は、岡林厚志さん(hyakka)、高見由香さん、羽田久美子さん(繍 ぬいとり)が終日在店くださり、谷田貝陵子さん、田屋道子さんも数時間在店くださいます。

日曜日は、羽田久美子さん(繍 ぬいとり)、谷田貝陵子さんさんが在店くださいます。

ハマスホイの絵を巡って、作家の方々がそれぞれに新鮮な想いで制作くださいました。
搬入をしながら、このような機会に恵まれてほんとうに豊かな気持ちにしていただきました。
ぜひ、多くの方々にご覧いただきたいと願っています。

たぶん、東京では一番か二番??くらいにハマスホイ関連の本も充実しています。
店内でぜひお掛けになってご覧ください。
(日本で一番は、山口県立美術館の健司さんの本棚だと思います!)