ヒナタノオト
作品展に寄せて

水村さんと知り合ったのは2019年の「工房からの風」。
以来、奈良の工房をお訪ねしたり、一昨年には伊勢丹展に出展いただいたりと、お仕事を見せていただいてき、自宅でも幾種かの手になるものを使わせていただいてきました。

今回、在店いただいてあらためて思ったのは「この人の本気は本気すぎる!」ということでした。
木の匙づくりを一生の仕事に思い定めて邁進している人の満々としたエネルギー。
それがなんとも気持ちよく、爽やかで、ああ、やっぱりものを作る人っていいな、と私の心のまんなかにじんわり響いたのでした。

それって、私にとっての自身の職業への重要な初期動機のひとつなのですが、
30年以上も続けていると、ふと隠れてしまうときも。
こうして、水村さんのように作る仕事へのたくましくも美しい気持ちに触れると、その源泉を新鮮に思い出すのです。

何が本気かって、ともかく、木の匙、フォーク、へらなどの調理道具、そのどれもをいかによりよく作り出すかに全力で間向かっているところ。

たとえば、これはジャムヘラ。
さまざまな形の瓶の底や縁のジャムも、なんとか残さず掬いとろうという想いで作られたかたち。
瓶の上にやじろべえのように留まるのもオマケのような愉しさ。

こちらは菓子きり。
オーソドックスなかたちを基に、お菓子を切る所作が美しく見えるように工夫されたカーブ。

フォークは大きさいろいろ。
洋食のカトラリーフォークのかたちから、万能タイプ、お子様用、ベビー用。
握り、持ち心地、強度、先っぽの仕上げ・・・。
どれもに「もっと、もっとよくしたい!」という想いが満ちています。

水村さんの作品の特徴は、刃物仕上げ。
粗どりしたあと、どれもが一点ずつ刃物で丁寧に削って手、唇、口内に心地よいように仕上げられていきます。
一度出来上がったデザインを踏襲するのではなく、毎回思考しながらブラッシュアップしていくものづくり。

「ここのカーブは~~・・・」

水村さんのフレーズで一番登場する言葉。
すべてのカーブに意味があって、その意味を美しい姿に整えて完成された作品の集積。

印象的なデザインが特にあるわけではないのは、使う側から解釈、積み上げてできたデザインだからでしょうか。
手元、口元で使ってみた時、デザインの意味をじんわりうれしく感じるところが、水村さんの真骨頂。

こちら、納豆ヘラ という名ですけれど、納豆だけではもったいない使い心地。
ヨーグルトなどの匙としても、また味噌ヘラなど道具としても秀逸。
匙と調理道具の中間的存在として、ぜひ暮らしの中に取り入れてほしいもの。
上部と下部のつくり、エッジの面取り・・・使うたびにうれしくなりますよ。

こちらは水村さんの作品群の中でも特に人気のレンゲ。
豆花たべたくなりますねー。
こちらもカーブ、深さ、毎回微調整しながら制作されています。

ほかに、画像が今なくてすみません。
調理ヘラも人気の道具。
右、左の角ぞれぞれの造形の違いは、調理の際に有効なかたち。

右、左、といえば、調理ヘラには左利きの方用もあります。
左利きの方へのプレゼントにもお薦め。

そして、ベビー、お子様用のカトラリーもお祝いのお品に。

水村さん、どの種類のものにも語る!言葉があって、それがとっても楽しいので、
できることならボタンを押したら、録音がしゃべってくれる装置(昔、動物園にありましたよね)作りたいくらいです。

水村さんには遠く及びませんが、可能な限りスタッフもお話しさせていただきますので、
会場でぜひ、匙、調理用具談義、花咲かせてください。

一昨年の伊勢丹展でお求めくださった方のリピートも多くてうれしいことでした。
「ここのカーブは~~・・・」
が、水村さんからの一番多いフレーズ。
そして、お客様からは
「使ってみてよかった!」
が、ダントツでした。

会期は延長して17日日曜日まで。
オンラインストアは16日土曜日正午から。
12日火曜日からは、お電話、メールでも承りますので、気になる作品有りましたらお尋ねください。