思想工房
作り手との対談
今回の作り手
片田学
1983年 山梨県生まれ
2006年 愛媛大学農学部を卒業
2006〜2008年 森林たくみ塾
2008〜2015年 holly wood buddy furniture
2015年春 トロワ設立
2019年 工房からの風 craft in action 出展
torowanokatada.com
工房訪問:彫ること・触れること
2022.08.268.27-9.4(月休)に開催する片田学さんの個展。
開催の一ヶ月前に、山梨県富士川町の工房をお訪ねしました。
工場跡地を活用した木工房。
器を中心に片田学さん一人が一貫して制作する空間には、工具、作業机、かたちとなるのを待つ材料が所を得て置かれていました。
大学で林学を学んだ片田さんは、体を動かす仕事がしたい、技術を身に着けた仕事がしたい、という願いのもとに、
飛騨高山の森林たくみ塾で学び、その後、木工家の家具工房で7年を働きました。
独立後は家具の制作も行いましたが、2019年の工房からの風出展以降は、器づくりに邁進されています。
「器の素材は栗の木が好きですね」
という片田さん。
富士山のふもとにある木材屋さんと親しくなって、多くの素材と出会うようになりました。
「よい木は大きなままで」
と、効率よりも素材が望まれていくところへのよき橋渡しを願って寝かされた木を、片田さんが選んで工房に持ち帰ります。
片田さんの器の特徴は、作り手の内側から立ち上がってきた造形、かたち。
先にデザインがあるのではなく、自身の心にある形と、木を彫りながら出会っていく感覚との接点から生み出されたような形。
木工作家にもさまざまなタイプの方がいて、その作り手らしい制作方法が生かされた時、作品が輝くように思っています。
どのタイプがよいという優劣ではなく、その作り手だから出来る仕事。
そういうスタイルを掴めた人の仕事に惹かれます。
「彫るのが一番好きなんですね」
という片田さんの彫る姿を見せていただいて驚きました。
渾身の力を籠めて。
まさに一刀入魂の制作。
想像を超えて、ある種、たどたどしいまでに丁寧に彫る姿を見せていただきながら、
これこそが、片田さんが辿り着いた体を使い、技術を身に着けた仕事なのだと感じ入りました。
ご紹介の機会を重ねるごとに、片田さんの木の器に魅せられる方が増えて、
ヒナタノオトの伊勢丹ではいつも開店時にお客様が集中するようになりました。
寡黙ともいえる木の器。
けれど、片田さんならではのフォルムの魅力に共鳴する方が増えています。
使い勝手や用途の特性というのではなく、器そのものが発するsomethingが届くことの喜び。
その喜びは、作家の制作の糧となって、作品を一層豊かにしているのでしょう。
彫りながら、触れる。
違和のないように形を探りながら彫り進める。
それは、作家自身の心に触れる営みでもあり、その実りとなった器が、使い手の日々を潤す手で心で触れる器になる。
片田学さんの木の仕事、3年ほど見続けさせていただいて、そんな想いにたどり着きました。
今回、個展に出品された作品は165点。
galleri vindueに展示をしました。
壮観です。
どの器にも用途が持たされていて、その用途は使い手の心が自在に決められる。
どの木の器と、どなたが、どんな出会いをしていただけることでしょう。
充実の個展、ぜひお楽しみくださいませ。
片田学さんは27日、28日の土日に在店くださいます。
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