ヒナタノオト
作品展に寄せて

自由学園明日館講堂での催事
『クリスマスに工藝を灯して feat.おばあちゃんの食器棚』
いよいよ開催までカウントダウン!状況になってまいりました。
ここからは、出展作家の方々からのメッセージをお届けしていきます。

稲垣から幾つかQuestionを投げかけさせていただきました。
その中から、作家の方が幾つかAnswerくださいましたものを掲載いたします。
なので、Qの番号が飛んでいる場合もありますので、先にお知らせいたしますね。

では、お一人目は長野県在住の佐藤かれんさん。
かれんさんは、なんと、自由学園のご出身なのです!
会場の講堂も親しまれた場所かもしれませんね。

Q1
佐藤かれんさん、今展にはどのような作品を出品くださいますか?

A1
ウールやカシミヤなど、冬にぴったりの暖かい素材でマフラーやストール、膝掛けを織りました。
また、暮らしのお供になるような、タオル、クロス、クッション、椅子敷きなどもお持ちします。

今年の秋に、織物留学をしたスウェーデンに久々に行きました。
そのとき北欧から連れ帰った糸や、旅の思い出を織り込んだ作品も並びます。

Q3
クリスマスの想い出の中で、工芸品や手作りのものにまつわるエピソードを教えてください。

A3
スウェーデンで、編み物が得意な友人から、クリスマスに手編みのショールをもらいました。

スウェーデンでは、クリスマスは家族水入らずで過ごすことが習慣です。
そんな中、ひとりの友人が、クリスマスを寮で独り寂しく過ごそうとしていた私を見かねて、家族を説得し、自宅に招いてくれました。
友人家族にとって、私は得体の知れない外国人です。
それなのに、一年の中でも特別な時期に快く迎えて下さったこと、何年経っても大切にしたい思い出になっています。

そのときのプレゼント交換で、友人から受け取ったのが、手編みのショールです。
家族を説得するだけでなく、いつのまにかショールまで編んでくれていて、一体どれだけの心と時間を使ってクリスマスの準備をしてくれていたのでしょうか。
彼女の優しさが込められた手編みのショールは、私にとって、スウェーデンで過ごした温かいクリスマスの思い出の象徴になっています。

Q4
『おばあちゃんの食器棚』の中で印象に残ったお話があれば教えてください。

A4
おばあちゃんの食器棚の中で印象に残ったお話は、第7話の「ウールのブランケット」です。
織りにまつわるお話ということもあり、共感できるところが沢山ありました。

特に、布を織ってみたけれど、思うような布にならなかったという部分は、もう、本当によく分かる一節でした。
私は制作のときに、自分の暮らしや、ものにまつわる実体験をもとに、織りたい布を考えています。
自分の生活周辺の出来事を心で感じたように、技法や素材を組み合わせて1枚の布に表すのは、ときに難しく、自分の不足と向き合わなければいけない瞬間が多くあります。

それでも織りを続けているのは、結局のところ、織りが好きで、織ることで自分自身が励まされているように感じるからだ思います。
下手でも続けていると、やりたい技法や素材のことが段々と分かるようになってきて、自分の織りの世界が広がっていき、少しづつ表現することが上手くなったり、自由になったりするように感じます。

お話を読む中で、織り手の彩子さんの織りへの気持ちをたどりながら、私も、自分の感覚が良いと思うものを、使う人たちに喜んでもらえるような仕事がしたい、これからも織ることを続けていきたいと、前向きな力をもらいました。

Q5
自由学園明日館にまつわるエピソードがあれば教えてください。

A5
明日館にまつわるエピソードといえば、自由学園の成人パーティーです。

私は中学高校の6年間を自由学園で過ごしました。
20歳になる頃には、小学校の友人たちとは疎遠になってしまっていて、地元の成人式が億劫でした。
結局、成人の日は地元には帰らず、式にも参加しなかったので、明日館で行われた自由学園の成人パーティーが、私の成人の思い出です。

自由学園の旧校舎である明日館には、建物に私が通った南沢のキャンパスと同じような雰囲気が漂っています。
そこで、久々に同級生と集まって食事をすると、まるで学園生活に戻ったように感じ、パーティーのあいだ、とても懐かしいひとときを過ごしました。

若き織り手の佐藤かれんさん。
これがすべて手織りだなんて! と感嘆するほど、こまやかな織りをたっぷりの作品に仕上げていらして驚くばかりです。

スウェーデンのセーテルグランタン手工芸学校(Sätergläntan)に留学をし、彼の地で暮らしながら学んだことが、かれんさんの制作の礎となっているように感じます。
キッチンクロスや、裂織りのマットなど、北欧の暮らしの中で日々使われてきたものを、かれんさんの心と手を通してかたちにする。
瑞々しい想いと制作の勢いを感じる作品群が明日館の講堂にかれんさんと共にやってきます。

『おばあちゃんの食器棚』にちなんだ作品も拝見するのが楽しみです。
皆様もぜひふわっとまとってみたり、ぬくぬく温もってみたり、手織り布ならではの感覚に触れていただければと思います。

土曜日の夕べには、トークイベントで少しお話もしていただこうかと思っています。
(16:30以降)

佐藤かれんさんは土日在館くださいます。

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