ヒナタノオト
作品展に寄せて
星の聖堂
星の聖堂には天使が舞い降りると 言われている。
天使は人のかたちをしている時もあれば、猫のかたちをしている時もあるという。
糸のように細い三日月が浮かび、美しい星が無数に瞬く夜、人々は聖堂を訪れる。
すると、かすかな羽音が聖堂内の空気を震わせているのを耳にする。
その羽音に耳をすますうちに、かつて一緒に暮らした猫に出会えたような気がするのである。
星の聖堂、と名付けられた作品。
岩田圭音(いわたたまね)さん。
手描きの文章は、小さな額の裏に添えられた小さな文字のもの。
書き損じては書き直し、一枚3時間もかかってしまったものもあるのだとか。
一事が万事、濃やかにとことん制作に力を注ぐ岩田さんのこの小さな文字の文章を読んで、不覚にも思わず店頭で涙ぐんでしまいました。
「かつて一緒に暮らした猫に出会えたような気がするのである。」
というフレーズが引き金になったのではありますが、なんというか、人の真剣で熱く澄んだ想いに触れたようで。
創作、ってやっぱりすばらしい。
版画と装身具が一対となった岩田さんの制作については、以前ヒナタノオトに寄せてくださった文章が伝わりやすいと思いますので、あらためて一部転記しますね。
『・・・
私自身について、「種火」は2つありました。
一つは、繊細で緻密な描画表現のできる腐蝕銅版画、もう一つは、たまたま目にしたアンティークのポーセリンブローチ。
銅版画制作においては、腐蝕によって刻まれる金属上の繊細な線や凹凸に魅了されたこと、
アンティークブローチについては、小さな磁器メタルに描き込まれている緻密な絵付けに魅了されこと。
ある時、この2つの「魅了された」体験が、私の中で不思議にも繋がり、今ある作品になったのだろうと思います。
もともと白い紙に擦られた版画も大好きでしたから、版画も原版も···と欲張り、「凹版画と、その原版の装身具」という形で一つの作品にしています。
大切にしていることは、小さな画面であっても、緊張感をもって向き合い、ひとつひとつニードルで「描く」ということ。
ひた向きに手を動かし、「描く」ことで生まれる世界が、どこかで誰かを楽しませ、時に癒す存在になってくれたらよいと、切に願いながら日々制作しています。』
今展では、美しい額装をした作品群に心惹かれました。
「夜、水のないところを、ゆっくり動く光があったら、それは星魚を食べた猫が歩いていると考えてよい。」
ストーリーからのオリジナル。
この作品にどれだけの作家の世界が詰まっていることでしょう。
ぜひ、会場でゆっくりご覧いただきたいと願っています。
こちらのみ、先行でオンラインストア「ソラノノオト」でもご紹介しております。
見て、読んで、額装した版画を飾り、その原版をブローチに留めて装う。
豊かな空想の世界、幾重にも。
ソラノノオト→ click
展示構成としては、もっとも多いのは、マットにおさめた版画と原版のブローチ。
こちらもひとつひとつの世界をぜひお楽しみいただけたらと思います。
猛暑で心もぐったり気味かもしれませんが、心の琴線に佳き音色を奏でるような作品群に没頭することで、暑気払いをしていただいてはどうでしょう。
(佳き音色って、岩田さんのお名前、圭音さんとちょっと響きますね!)
展示は今度の日曜日16時まで。
ご来店をお待ちしております。
P.S
お隣のSingleOさんでtake outしたコーヒーをお飲みいただいても結構ですよ。
デンマーク名作椅子や日本の木工作家の椅子など、お好みの椅子に腰かけてどうぞ。
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