店主ブログ
日々の芽吹きの記録

空のよう

2020.02.25

灯し、照らす4人の仕事
最初の週末を終えました。
土曜日は、鈴木さん、片田さん、岩田さん。
日曜日は、鈴木さん、片田さん、二井内さんが在店くださいました。

鈴木有紀子さんを除いては、発表活動をされてあまり時間が経っていない、所謂新人作家の方々。
少し忘れかけていた独特な感じを思い出しました。
それぞれの作家をめがけてこられる方が少ないんです。
ここのところ、すでに愛用されている方とか、ファンの方とか、めがけてこられる方の展示が多かったので、時には整理券をお出ししたり、ということに慣れてきていました。
なので、初めましてのお客様も多かったのですが、今回はお越しいただいたのが、ほとんどがヒナタノオトのお客様だったような気がしました。

でも、今とても人気のある作家になられた方でも、初めは皆さんそうだったんですよね。
工房から旅立った作品は、どなたのお手元に届くかもしれず、あてもなく、ただ未開の地に足を踏み入れるような・・・(ちょ、ちょっと大げさでした(笑))
誰のもとへ届くかわからず、届く保証もなく、ただ自らの心に向かって作られるもの。
それが始まり。
ギャラリーは、その作家にとっての未開の地を、少しでもふかふかにして、人々が訪ねたいと思えるような地にして、作品とひとをつなぐ場なのだと。

鈴木さんを除いては、まだ確たるお客様と出会えていない(少ない)作家の方々の仕事。
私としては、ご紹介したい気持ちがあるからこのような機会を設けたのですが、やるべきことをやりきれていないような、どこか少しじれったいような気もしてしまいます。
かといって、いいと思うことを、あまり言い過ぎてしまうのも押し付けになってしまいそうですし。

「空のようですね」
ひとりのお客様が、二井内さんのコバルトの器を見てそう言いました。

「うれしいです。。
自分で言ってしまうと、セールストークみたいになってしまいそうで言えないんですけど、そう思って作っているんです。
今日、九州から飛行機に乗ってきたとき、ずっと空を見てたんです。
ああ、きれいだなぁって。
雲の形って、どれも違うなって。
このコバルトのシリーズは、窯から出してみて、ひとつひとつ違う加減で焼きあがるのをみて、
空みたいだなぁ、雲みたいだなぁって思ってるんですよね。。。」

お客様が作品に向かう様子を、どこか緊張の面持ちで見ていた二井内さん。
「空のようですね」 の一言から、まさに少年のような表情が現れて、そう話してくれました。

言えない、んですね、こんな素敵な想いを。
こういうお話しこそ、みんな聞きたいと思うのだけれど。
でも、そんな言えなかったうぶな想いを知ることが出来て、とてもよかった。
今展を企画して出会えた想い、言葉でした。

ギャラリーが収穫、刈り取りの場だけではなく、水を与えたり、与えられたり、陽の光や養分をくみ取れる場であったら。
作る人も使う人も、これからの時間にとって、心豊かになれる場であったら。

この仕事を始めた30年以上前から想ってきたことでした。
近年、SNSなどで情報が広やかになったことで、よくなったこと、恩恵もたくさんあります。
と同時に、ギャラリーがSNSで見た画像の作品を、求めにくる場だけになってしまっていないだろうか、という気持ちも生まれます。

それは、とってもつまらないこと。
そして、つならなくしてしまうとしたら、私たちの力不足ですね。

知らない作家さんだけれど、このギャラリーで紹介するのだから、ぜひ行ってみよう!
そんな風に想ってもらえるようになりたいです。
灯し、照らす4人の仕事
まだ見えていない、気づけていない魅力をぜひ、それぞれの方の目で見つけていただけたらと願います。