店主ブログ
日々の芽吹きの記録
手しごとを結ぶ庭
2020.05.26手しごとを結ぶ庭
稲垣早苗 著
アノニマ・スタジオ 刊
2006年
ヒナタノオト店主、工房からの風ディレクターである著者初の単行本。
工藝との出会い、工藝を伝える仕事との出会い、工房からの風の誕生などを、
種、芽ぶき、施肥、切り戻し、花と言った章に託し綴られています。
著者の仕事は、自然と人がつながって生まれる工藝、手しごとを紹介し、
作り手と使い手、作り手と作り手を結ぶこと。
さまざまな交流を”心の庭”を丹精するさまに重ね合わせて育み、
みどりいろの風に誘われて集う人たちの手がつながって、
やがてほんとうの“手しごとを結ぶ庭”の扉が開きました。
「(その場所が)必要だから生まれた。そう、わたしは思う。
希いという種に、土や陽や水が適切に添えられて、実生となって育っていった。」
その言葉は、個人の創造へむけてのメッセージへと続きます。
何かを始めるためにも続けるためにも、
想いを育む場である“庭”という存在はかけがえのないものだと気づかされます。
著者がいま一層力を注いでいる、作り手の生きた言葉を伝えることと、作り手とその仕事を文章で伝えること。
その泉となる想いにも触れています。
“よきもの”とは何なのか。
工藝に携わる人へ、工藝を伝える仕事を志す人へ、贈りたい一冊です。
—
いまこの紹介文を書いている手は、ついさっきまで藍の苗を畝に定植していました。
本書にも登場し2003年から種をつないできた藍は、今年もたくましく葉を伸ばし始めています。
この巡り合わせをしあわせにおもいます。
宇佐美智子
「book cover challenge day 好きな本を1日1冊 7日間ご紹介」
というSNSでの企画に、谷恭子さんがこの本を選んでくださいました。
→ click
谷恭子さんは、ご自身のジュエリー・デザインのお仕事に加えて、木工作家の谷進一郎さんのお仕事も支えられこられた方。
そこに「スタジオKUKU」という木工家具・小物のブランドを設立、主宰されていました。
木の恵みと木工技術とこまやかな心遣いに裏打ちされたデザインが素晴らしい「スタジオKUKU」でしたが、昨年、谷恭子さんご自身で、それは見事に美しく!活動を終了なさったところです。
現在は、山を訪ね、花を生け、日々の暮らしの美をインスタグラムで伝えてくださっています。
人生の、そして工藝に携わる身としても素晴らしい先輩である谷さんが、この本を大切にお読みくださっていること。
しみじみありがたく、このご縁を大切に抱いていきたいと想いをあらたにしています。
このオウンドメディアのタイトルを決める時、あらためてこの本の中に、やりたいこと、やるべきことがすべて詰まっていることに気づきました。
折に触れて原点に振り返っては確認し、そして、慣れることなく、開拓、刷新の気持ちを鮮らしく。
今、お読みいただいているこの頁そのものが「庭」の一部ですね。
丹精をしていきたいと思います。
ところで表紙と挿画を描いてくださったのは、山本祐布子さん。
表紙の切り紙や、各章に描いてくださった線の美しさはひとしおです。
(山本さんの伸びやかな線に、なんとも心が晴れるのです)
今は、千葉県大多喜で「mitosaya薬草園蒸留所」をなさっています。
14年前、打ち合わせでニッケのお庭にいらしてくださったとき、庭のハーブブーケをお渡ししたら、大切そうに抱えて香りを味わっていらっしゃいました。
今はこのお庭以上に多くのハーブに囲まれて、ふたりのお嬢さんを育てていらっしゃるとは。
自分の庭を丹精する、とは、自分の人生を丹精すること。
出会った方々の素晴らしい時間は、自分の庭の養分にもなってくれるのでしょう。
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