ヒナタノオト
作品展に寄せて

「猫に真珠」展出展作家有志の方から、猫にまつわるショートストーリーをご寄稿いただきました。

vol.6
いわもとあきこさんの「ねこはどこからハケンされてくるのだろうか?」

 

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ぼんやりと日々を過ごしている人間のところに、ちょいとドラマチックに登場したりするねこたち。

明治生まれの祖父母と暮らしていた我が家では、いわゆる「ペット」と暮らすことはゆるされないことだった。
野良猫をほうきを振りあげて追いかけるようなおばあさんで、今思えばその光景はおもしろいのだけど、当時は恐怖でしかなかった。
そのころの我が家では「いぬ・ねこ飼いたい…」は、禁句だった。

そののち、二人が亡くなって、もこもこの犬×2匹、たぶん捨てねこ×2匹と暮らしてきた。

2匹のねこは突然現れた。
それはいつも何か示し合わせたように、ひとしごと片付いたときにやって来る。

ハケンされてきたねこたちは、うでの中でねむり、猫なで声で鳴き、ゴロゴロ~スリスリ~と、人間の心を見事にもってくのだけど、ハケンさんはいつか返さないといけない。
それは不意に奪われるように早かったりもするし、じっとりと長いのかもしれない。

そのたびにそのホクホクした記憶の爪痕はどれも深く残って、そのうち思い出に変わる。
ときにそれには時間がかかるのだけど、そんな人にはまた次のハケンさんがやってくるシステムになっているもよう。だから安心して。

うちのハケンさんは元気に今日も働いています。
毎日おつかれちゃん!

時給はカリカリと、たまに海苔。