ヒナタノオト
作品展に寄せて

ヒヅミ峠舎 とうげい展
無事初日を明けました。

梱包箱から出して、一点ずつを並べていると、
遠く山口県はヒヅミ峠、
その工房での漲るような創造と制作の息吹きが、ギャラリーいっぱいに広がっていくようでした。

ヒヅミ峠舎さんは、三浦圭司さんが成形、施釉、窯焚きなどを担い、
アリサさんが絵付けに専心されています。

「アリサさんの人物(?)画って、ロマネスクのようですねー」
昨年、私が感じたままをお伝えすると、きょとん、とされていたアリサさん。
ロマネスクを意識して描いてはいないところが、まさにロマネスク!
と、ますますその企まざる純真な絵心に惚れ込んでしまったのでした。

アリサさん、あらためてロマネスクの本などを見入ったり、読みこまれるほどに、惹かれるところばかりだとおっしゃいます。

「アリサさんは、どのようにこれらの絵を描かれるのかしら?
何かを模写されているようでもなさそうですし、思うままに筆を走らせるのかしら?」

などと不躾にもお尋ねすると、

「なんというか『そばに居る』って感じなんですよね。
そう、そばに居るものを描いているような」

と、返してくださいました。
そばにいる・・・。
思ってもみなかった言葉でした。

ヒヅミ峠舎の陶器。
アリサさんの天衣無縫な絵を品格ある姿で見せてくれるのが、
圭司さんの手、腕、なのだと思います。

土の重すぎず、軽すぎない絶妙な厚み、頃合いに成形された器。
しっかりと焼成された「焼き物」としての完成度。
糸底の始末なども丁寧で、いかにしっかりとした心構えで陶芸に向かわれているかが伝わってきます。

今回は、いつも以上に色絵の作品を多く作ったこと。
更紗の文様を自分なりに書き込んでみたこと。
ロマネスクと私が勝手に呼んでいるシリーズを多く手がけたことなど、
濃密な制作時間を過ごされたヒヅミ峠舎のおふたり。

「ほんとうに、会場にいきたかった。
皆さんの反応がみたかった、聞きたかった」

コロナ禍の中、山口からの上京を断念されたのですが、
いつかぜひヒナタノオトにお越しいただきたいと願っています。

初日は予約制とさせていただきました。
お陰様で混雑せずにゆっくりとご覧いただけたように思います。

日曜日からはご予約なしでご覧いただけますが、
もしも混みあった場合は一時的にお待ちいただく場合があるかもれません。
ご理解とご協力の程お願い申し上げます。

ヒヅミ峠舎 とうげい展
13時から18時。
30日(日)まで(最終日16時まで)
月曜、金曜がお休みです。