スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

爽やかなひと言

2021.09.07

9月に入り、急に秋の気配を感じるようになりました。
爽やかな味わいの津軽りんごが店頭に並び始めると、秋の訪れを感じてほっとします。

わが家の台所で毎日使っている勢司恵美さんの籠。
陶器や木の器を金属の洗いかごに入れると傷がついてしまう気がして、以前から竹の籠を使ってみたいと思っていました。
昨年、自由学園明日館で行われた展覧会で出合った勢司さんの「タラシ」。
小ぶりなサイズと編み目の美しさ、青い竹の色と楕円の丸みの可愛らしさに惹かれて手に取りました。

使ってまず思ったことは、乾きが早いこと。
洗った器を布巾でさっと拭いてから、布巾を敷いた籠に伏せるとすぐに乾きます。
勢司さんとお会いした時に、
「グラスが曇らないんですよ」
とお話されていましたがその通りでした。

風通しの良さが気持ちよく、竹のしなるようなやわらかさが器にはもちろん、眺めていても清々しく心地よい気持ちになります。

ほかに、勢司さんの籠では、茶碗めごも展覧会で人気でした。
底上げの高さは風通し良く考えられ、小ぶりな丸型は置き場所を選ばず、お茶碗やお椀などを受けとめる程よい高さは安心感があります。
ダイヤ形の美しい編み目から覗く器やグラスの清々しさは、台所まわりをすっきりと見せてくれることと思います。
8月にヒナタノオトに届きましたが、すぐにお選びいただきました。
また、次回の入荷が待ち遠しいです。

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昨年の春の展覧会で初めて拝見した前田充さんのお米カップ。
形の正確さと誠実さが伝わってくる作品、その中に手の跡が残るあたたかさに惹かれました。
お話を伺うと、お米1カップ分を何度も何度も計り、修正を重ねながら制作されたとのことでした。

わが家の米びつはホーロー製なので、使ってみたいけれど、せっかくのカップが見えないのは残念だなと迷っていたら、
前田さんは「見えなくてもいいんですよ、使っている時の自分の気分がよければ」と。
その爽やかなひと言は心にすうっと染み込んで、ずっと心に残っていました。

好きな器を目で愉しむように、見えるところだけでなく、見えないところも気持ちよく。
日々使うものが暮らしの中で、自分にとって心地良く感じられることがとても幸せなことだとあらためて感じました。
今、私は毎日お米を炊くたびに、前田さんの言葉を思い出しながらあたたかい気持ちになっています。

そして只今、ヒナタノオトでは、津村里佳さんのガラス展を開催中です。
津村さんの花の器で、日々を彩られる方が多いことにあらためて気づきました。
私のそのひとりです。

近藤佳代