店主ブログ
日々の芽吹きの記録

蒔き直し

2021.12.08

師走も半ばを迎えますね。
外出時に、首元のマフラー、ショールを選ぶ楽しさも日々のことになりました。
ヒナタノオトの「クリスマスに工芸を灯して」も佳境に入ってきたところ。
ちょうど盛岡の舞良雅子さんからのストールも加わりました。
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表立って書くことに迷いがかなりありましたが、今週ようやく一息つくことができたことと、
誤解のままの作家の方がいらっしゃるととても申し訳ないので、
考えた末にこの場でこの二ヶ月ほどのことを書こうと思います。

ここは公開スペースですので、どなたがお読みになられてももちろん結構ですけれど、
楽しい話ではありません。
それでもお取引のある作家の方には、ご一読いただけましたら幸いです。

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「工房からの風」開催のちょうど前と後に、夫が手術で入退院を繰り返しました。
高齢ながら、病院にかかることもなく、薬類も一切服用していない、私より体力、筋力のある人でしたが、病魔が身体を蝕んでいたんですね。
あまりよい状況ではありませんでした。

そのことは一気にわかったことではなく、検査を重ね、診察を受けながらひとつひとつ知らされ、
そのたびにずしりと心に現実がのしかかり、受け止めようともがきました。

私に何ができるわけでもないのですが、母宅と夫宅をいつも以上に行ったり来たり。
仕事の場では、「工房からの風」と「ヒナタノオト」、そして「明日館」の催事と、
目の前のことにいっぱいいっぱいでした。
居眠り運転しそうになって、幾度かヒヤリともしました。

先のことでやらねばならないこと、訪ねたい展示、工房、どこもあきらめ、目の前のことで精一杯。
それでも、仕事の現場では、たぶんどなたもそんなことは気づかれなかったことと思います。
それは隠していたのではなく、仕事の現場ではいつも生き生き明るくなっていたからです。
それが自然なことだったのです。

けれど、ひとりになると、ぐったりでした。
過去に幾度かあったしんどい時と同様に、そういう時はストレスが過食に向かいます。
よくないとわかっていながら、夜に甘いものなどを食べこんだりしてしまうのでした。
眠りの浅い日が続き、それでも仕事の現場に着けば、自然と元気でいられたのでした。

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先日、ある作家の方との会話の中で、私からの連絡、やり取りがないことに対して
「稲垣さんにとって、自分はもう大切な作家ではないんだと思った」
というような話が出ました。

それはとてもとても悲しいことで、申し訳なさと、自分の非力さで押しつぶされそうになりました。
その作家の方とは、その時にゆっくりお話をさせていただき、
そのようなことは露ほど思ってはいないことをお伝えしましたが、
そのように思われてしまうような私の仕事ぶりに、芯から情けなさが募りました。

と同時に、この身がひとつであることの限界も感じました。
夫のことも母のことも、ヒナタの企画に関しても、今風に言えばワンオペで、
どれもが中途半端なのだと思います。
夫も、母も、作家の方々も誰もが満たされない。
必死なのだけれど、空回り。

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それでも、朝は巡ってきます。
この日に予定されたことをやる。
それをまっとうして、翌朝を迎える。
気になること、連絡をしたいひと、進めなければならないこと・・・・
積み残したまま、日々のことを終えて床に就く。
そんな日が続きました。

交流のある方で、ご家族のことなどで、きっと大変な日々を送られているだろう方を幾人も知っています。
その方々の笑顔や優しさ、たくましさを想うと、ほんとうに自らの非力を感じます。
そのすばらしさは今の自分の心の養分としつつも、力及ばない自分の今も認めてあげないと先には進めない。
あんまり思いつめないようにしよう。
そんな風に思ってもいます。

 

12月に入って、夫は外科的治療から内科的治療に移り、入院となりました。
病室はオーシャンビュー。
心の中は南島のことでいっぱいな人には、慰められる景色だと思います。
幸い副作用もあまりなく、持ち込んだ書物を読み漁りながら、
効果を願って治療を進めています。

コロナ禍の中、面会は入院日と退院日のみ限定です。
この際、やるべきことをやったらいいよ。
といつもながら、私の仕事を応援してくれています。

先日の作家の方との会話からの気付きで、もっと作家の方とやりとりをしよう。
心から思いました。
そして、夫が治療に頑張っているこの3週間、私も過食などしていないで!
生活リズムを立て直し、溜まってしまったあれこれをひとつひとつ進めていこうと思います。

そして、企画はワンオペではなく、もっとスタッフにも割り振って、
積極的に作家の方々とやりとりをしてもらおうと。
私だけで抱え込まずにいると、思いもよらない豊かな展開に進むかもしれませんね。

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そんなことで、お取引させていただいている作家の方々、しばらくご連絡が出来なかったのですが、年内に来年以降のあれこれをどんどんやり取りさせていただこうと思います。
作家の方からも、どうぞご連絡お待ちしています。

このようなことを書かずにスマートにできたらよかったとは思っていますが、
自分の非力を認めて、状況をお書きしました。
そしてどうか、大切に思われていないというようなことは思わないでほしいと思います。
お互いを信じて、変に思いこまず、ハテナと思ったら、ざっくばらんに話ができる関係を作っていきたいです。
そのことを願ってこの場に綴りました。

蒔き直し。
種を蒔く段階からやり直すこと。
そう、今、気づけたこと、夫からの応援、スタッフたちの存在・・・を土壌にして、蒔き直しです。

長文になってしまいましたね。
お読みいただき、ありがとうございました。
年内、ヒナタノオトにもぜひお越しください。
私は19日の日曜日以外土日はおります。
平日もお知らせいただけましたら、なるべく向かいたいと思います!