スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

きたえてきたひと

2022.02.02

にしむらあきこさんの作品展「青の王国」が、5日土曜日から始まります。

あきこさんに、「プロフィールをあらためて書いてほしい。ありきたりじゃなくって、率直に」
とお願いをしました。
なんだか、妙な無茶ぶりみたいでしたが、私なりに意図があり、それを汲んでくださって、以下のようにまとめてくださいました。

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銀行員カップルの長女として京都府に生まれ、小学生から千葉県市川市で育つ。

終始何を考えているのかわからないぼんやりした子供で、友達も少なかったがそれを気にしていた様子はない。

中学時代は演劇部に所属、夢中になった。

高校ではもろもろの事情で演劇部を諦め、運動音痴だけど運動部の空気を感じてみようというチャレンジ精神だけでサッカー部のマネージャーになる。
真っ黒に日焼けし、ザ・青春を体験できた3年間だった。

大学進学を意識したのは高校2年生の終わり。美術系に進むには準備期間が足らなすぎ、浪人は選択肢になかったことから、デッサンなどの試験がなく美術っぽいことが学べる家政学部を選択。無事合格し、4年間はバイトと演劇と美術っぽい授業に明け暮れる。

大学を卒業した後、夜間の専門学校で設計を学び、のち派遣社員として機械設計やオフィス家具設計のCADオペレーター、レストラン会社や文具企画やホテルの広報のグラフィックデザイナーとして会社を転々とし、日々の糧を稼いだ。

あるとき和紙を使ったオブジェ製作に興味を持ち、和紙造形大学という世田谷区が運営していた学びの場に通い始め、すっかりハマってしまう。
はじめた当初は美術寄りの思考が強く、そのときに応募した今立現代美術紙展で優秀賞と大賞をいただいた。

「工房からの風」という舞台に恵まれ、同時に出産も経験し、すこしずつ制作の質と方向性が変化していくが、さなかにいる本人は全く無意識であり、戦略などもないまま、ただただ流されるように今の表現のかたちに落ち着いた。

偶然と必然と幸運が重なり、2019年仲間達と文化複合施設的な場所「百才」をオープン、念願のアトリエを手に入れた。
現在はそのアトリエで、相変わらずもくもくこつこつと制作に励んでいる。

一か所だけ、投げかけをしました。
最後のところ、
「・・・さなかにいる本人は全く無意識であり、戦略などもないまま、ただただ流されるように今の表現のかたちに落ち着いた。
これからも変わってゆくのかしらねぇ、と、いまもなおぼんやりは発動中である。」

と、あったので、あきこさん、そんなにぼんやりしているかなぁ。
少なくとも、私はぼんやりさんだなんて思ったことないなぁ。
と伝えました。
ちょっと照れて、あるいは謙遜されて、そして、冒頭のぼんやりと呼応させた文章としてフィニッシュ(ペンをおく)したのかもしれませんでしたが。

ぼんやりの是非はともかくも、百才(ももとせ)という場を引き寄せ、活動をより豊かにできるようになったことを記して締めたらよいのでは。
と、感想と意見を伝えました。
そして、仕上がったのが上のプロフィールです。

最近、強いひとについて思うことがありました。
同じ状況にあっても、強く克服できるひとと、弱ってしまうひと。
その違いは何だろうと。

パーソナリティー、持って生まれたものとして強いひとって、やっぱりいますね。
また、その逆も。
持って生まれたもののほかに、環境でも変わっていきますね。
佳き友人をもつことで、弱ったままにならずにいられるとしたら、それもそのひとの力であったりとか、、、いろいろ思うことが続きました。

あきこさんは鍛えてきた人。
あきこさんをみていると、そう思わずにはいられません。
パーソナリティーとして強いままに現在があるのではなくて、
ひとつひとつの事柄をきっちり受け止めて、誰かや何かと比べることにエネルギーを浪費せず、
心を鍛えて、鍛えて、現在のあきこさんがある。
そのことをもっとも示すのは、あきこさんのいつもの笑顔。
そして、息子の知青(ともはる)君の笑顔だと思います。
どうして、こんなにいい笑顔なんだろう、といつも出会うたびに思います。

心を鍛えて、鍛えて・・・の日々の中、あきこさんは制作を手放さなかった。
時間や空間的には、かなりきびしい負担があったことでしょう。
それでも手放さなかった制作、創作の泉から、作品となってこんこんと湧き出でてくるものとの出会いの場を創りたかった。
これが、今展の企画の根っこです。

明日、作品が届き、開梱して、展示をします。
週末の土日はあきこさんも在店予定です。

心を鍛えてきた人(なんて書くと、あきこさんに嫌がられそうですが)しか創りだせない物語、
そして、それを和紙造形で表現した作品の数々にぜひ、じっくり浸ってほしいと希います。

私たちスタッフも体調万全に整えて、お出かけくださった方に安心してご覧いただけるように一層の心配りをして、お迎えしたいと思います。
では、いざ、会場作成へ。