スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

「仕立てがよい」とは

2022.09.25


月曜日は定休日となっております。
受注の承り数は、あと12点で終了させていただきます。
ご希望のお客様は火曜日以降、お早目のご来店をお待ちいたしております。
尚、一部現品販売は継続して行わせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

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雨模様の土曜日、VANILLAさんの受注会の初日を迎えました。
制作されている高野学さん、ちえみさんご夫妻も在店くださり、
多くのお客様とともに賑わいの日となりました。

店頭では、偶然居合わせたお客様同士が、
お互いにご試着をされながら楽しそうにお話しされたり、
お洋服を選ぶことを楽しまれている様子も。

ヒナタノオトでも回を重ねている受注会。
今回は「お気に入りを生地違いで」というテーマです。

お気に入りの服は、登場する頻度が高くなりませんか?
洋服は、一日の大部分をともに過ごすものだから、
気に入ったデザインの着心地の良い服は、その日を気分よく過ごすための大切な選択。
だからでしょうか。
VANILLAさんの受注会でも、お気に入りをもう一着、というご希望を承ります。

デザインをされている高野ちえみさんご自身が、
「これさえあれば、もう他にはいらない」と思えるような作品の数々は、
どのデザインも身に着けたときに、すっと体を包み込んでいるように感じます。

たとえば、ケープ。
ふわっと羽織ると、美しく立ち上がった襟は胸元にかけて自然に寄り添うようにカーブを描きます。
これは、「ストールを着ることができたらよいのに」
というちえみさんの思いから生まれたもの。
布をまとったニュアンスを出したくて、試行錯誤の末立体裁断で型紙を起こし、
思い通りの形が完成しました。

ちえみさんが求めるイメージを理解して形にするのが、縫製を主に担当される学さん。
デザインの雰囲気を生かすよう、実際の形に落とし込んでいきます。
ステッチを表に見せるのか、見えないように仕上げるかなど、
どうしたらきれいに仕上がるのかを考えて、そのための最善の方法を探ります。

お話を伺っていて驚いたのが、コートの裾の縫い方。
通常、裾の部分を縫う際には、内側にあたる方を上にして折り返しを見ながら縫っていきます。
ところが、学さんは表を上にして縫うといいます。
つまり、折り返しの端が見えない状態で、際を手探りで見定めながら縫っているのです。
その理由は、「その方が、仕上がりがきれいだから」。
そんな学さんの職人技を「攻めてるわぁー」とはちえみさんの言葉。

VANILLAさんの洋服にはどこか「きちんと感」を感じますが、
それは、フォーマルな雰囲気というのとは違う、佇まいの美しさのようなもの。
お二人のお話からは、その美しさを生み出しているのは、
「仕立てがよい」という言葉では表しきれないような、
こうした一つ一つの積み重ねなのだということがよくわかります。

(このスカートのウエスト部分、生地の雰囲気からミシン目が出ない方がよいからと、手縫いで仕上げられています。)

好きな生地をみつけるとこれで何をつくろうかな、とわくわくする、というちえみさん。
今回も、ご自身がときめいたジャカード織のチューリップの布など、
魅力的な生地から生み出された形がそろっています。
オーダーならではの時間を楽しみに、ご来店いただけましたら幸いです。

また、一部現品販売もございますので、こちらもぜひご覧ください。

文  瀬上尚子
写真 中川碧沙