ただいまヒナタノオトでは「三つの工房から」展を開催しています。
最初の週末二日間は、作者三人が在店くださり各工房の風景を小さく切りとったような、それぞれの制作過程を感じられるデモンストレーションを行ってくださいました。

「かぜつち模様染工舎」の南馬久志さんは、藍甕の染液を瓶に入れてギャラリーに展示。
「旅する羊」の猪又裕也さんは、紡毛機を使って糸紡ぎを実演。
「杉田創作」の杉田悠羽さんは、自作の南京鉋を使った鉋掛けを。

普段目にすることのない制作の光景に興味を持たれたお客様が、じっくりと作品をご覧になり、作者と会話を交わす光景が見られました。

単色で藍染めをしたガーゼストールや型染めの作品などをお持ちくださった南馬さん。
濃淡様々な色合いに染め上げられたガーゼストールは、薄い色から染めはじめ、何度も染め重ねられて堅牢度が高く仕上がっています。
ご自身の経験や、古布を見て工夫を重ねて制作されるという型染めの作品。
古の職人さんに思いを馳せながら制作することも多いといいます。
そしてまだまだやってみたいことがあるとも。
お話を伺って感じるのは、あふれる探究心と藍染めへの情熱。
「見る人の心に響く作品」へ踏み出す歩みをご覧いただけると思います。

手紡ぎ手織りの毛織物、ホームスパンを制作されている猪又さん。
様々な色合い、形のマフラーを出品くださいました。
差し込むだけで首回りにほどよく収まるように工夫された、小ぶりのマフラーや、付け襟のように形作られた作品も。
ギャラリーの一角で糸を紡ぐ猪又さんと紡毛機が奏でる音を聞いていると、静かな時間の流れを感じ、心が落ち着きます。
人の手で紡がれていく糸は空気を含んでふっくらとした表情。
仕上がりをイメージして、自ら紡いだ糸で織り上げる。
手紡ぎ手織りだからこそ生み出すことのできる作品は、まだまだ続きそうな寒さに、そっと暖かさを添えてくれます。

木工作品を制作されている杉田さんは、食とコーヒーの道具をお持ちくださいました。
コーヒーメジャー、ドリッパー、スパイスミル、カトラリーなど、どれも細部に作者らしさを感じるたたずまいをしています。
旋盤加工と違って、ゆっくりと自らの手で削っていく鉋掛けが好きだという杉田さん。
道具である南京鉋は小回りのきく小ぶりな鉋。
杉田さんは南京鉋も自ら制作されています。
残り少なくなっている作品もありますが、端正な形の食の道具、ぜひご覧いただきたいと思います。

ジャンルの違う三名の作家に共通しているのは、その活動を根底で支える情熱と、作家としてこれから枝葉を伸ばしていこうとしていること。
作品を通してのお客様との交流が、制作へのよい刺激となったのではないでしょうか。
南馬さんと猪又さんは28日 土曜日、29日 日曜日も在店予定です。
それぞれにこれから歩みを進めていく作家の新鮮な作品をご覧いただける展覧会です。

文　　瀬上尚子
写真　中川碧沙

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