スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

連なる青の系譜

2023.05.10

神田祭を来週に控え、日本橋界隈では日ごとにお祭りの雰囲気が感じられるようになっています。
そんな空気の中、下地康子さんの展覧会「あさどれ、ようどれ」が始まりました。
会場には下地さんのお父様が撮影された沖縄の海の写真も展示。
作品と響き合って、波や風の音まで感じられそうな空間です。
初日と二日目には下地さんも在店くださり、
訪れたお客様と言葉を交わしていらっしゃいました。

現在、国展に作品を出品されていることもあり、国展と併せてヒナタノオトを訪れてくださるお客様が連日多くいらっしゃいます。
作品の持つ繊細な表情や、草木で染めた糸で表現された色彩、そして多彩な織り。
一点一点時間をかけてご覧になる方が多く、
「ため息が出るような作品・・・」とおっしゃる方も。

幼いころから手仕事に関心のある子どもだったという下地さん。
身近に機織りの音が響く文化がまだあったこともあり、自然と魅かれていったそうです。
機織りの音と沖縄の海や空の風景。
ご自身が織り上げる機の音にかつての音が重なって、美しい布の景色が織り上げられていくのでしょうか。

今展は、沖縄の海を思い起こす「青」が中心の展覧会。
作品は様々な青の表情を見せてくれます。
白い砂の浅瀬から水平線、そして海から空へと、光と風と水と空が描く無限の色。
寄せては返す波のように、果てなく連なる青の系譜。

重なる波が複雑な景色を見せるように、透けるように薄い布が重なり合って生まれる奥行。
首元にさりげなく巻いたり、ふわりと羽織ったり、そのたびに違った印象が生まれます。
大判に見える作品も、その繊細さと軽さとともに、コンパクトに巻くことができることに驚きます。

今回の展覧会のタイトル「あさどれ、ようどれ」と名付けられた作品。
波立つ水面そのもののように動きを感じる作品です。
(こちらの作品はご売約済みですが、ご厚意により展覧会期間中は展示させていただいております)

草木の恵みを写し取り、糸の声を織り上げた下地康子さんの作品。
すでに多くの作品をお選びいただいておりますが、まだまだ見ごたえのある作品展です。
13日 土曜日、14日 日曜日には下地さんも在店くださる予定となっております。
ぜひお運びくださいませ。

文 :瀬上尚子
写真:中川碧沙