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ヒナタノオト日誌

手から手へ『RIRI TEXTILE -重なる温容-』展に寄せて

2023.10.11

暦通りに咲いた真っ赤な彼岸花は、青空に映る夏の風と秋の光を行ったり来たり、街路樹の袂でゆらゆら揺れていました。
RIRI TEXTILE和泉綾子さんのご自宅兼工房を訪ねたのは、ようやく手がかかりかけた秋の扉を背に夏の気配に振り向いてしまった9月下旬。
「今日はまた急に暑いですね。」
の声に振り向くと、自家製の梅シロップに、シュワシュワの炭酸水でウェルカムドリンクを作ってくれたRIRIさんが笑顔で迎えてくれました。

柔らかな陽の光の入る東側の窓、傍に足踏みの織り機があり、その部屋には織りにまつわる道具や糸などの素材、本も並べられて。
織り機には、『重なる温容』展に出品くださる新作の紋様が機にかかり、織り上がりを待っているかのよう。
陽の光のスポットライトを浴びた経糸と緯糸は、冬景色を浮かべながら温かな陰影を織りなしていました。

『”布”として良いものを織り上げたい』
今回のDMに寄せてくださった和泉さんの言葉。
大学で染色を学ばれ、その後、織りも学び、共に深めて来られた染織の世界。
軽く、あたたかな布になるようにと願い織り上げられる冬の布。
新たな織柄のために選ばれた、アルパカ、カシミヤ中心の糸。
その声に心を澄ませて、織り上がりのイメージを膨らませて、和泉さんの手が受け取るように織り上げられて行きます。

RIRI TEXTILEさんの布は、自身が感じられる、心地よい肌触り、軽やかさ、温かさ、、
美しい!や、かっこいい!など。
和泉さんの感性に響きそこに技術が添い、さらに一層と鍛錬を繰り返してきた時間や、
手にとってくださった方々が温かな気持ちになってくれるようにと願う柔らかなお人柄も織り込まれて。

制作の過程では、作品に迷うこともあるそうです。
そんな中でも、自分の本当の声や、今しかできないことをと。
いったりきたりしてぶれてもいい、でも最後はぶれないように。


「古の薔薇」という名の織柄
新たに取り組まれた織柄は、マフラーや大判のストールに。
フリンジは、人が纏うことをイメージしてさまざまに。

大学を卒業して以来、制作を続けてこられたことでの新たな喜びや発見も。
以前お選びくださったストールやマフラーを纏い展覧会にいらしてくださる方にお会いするとき。
使い込まれ、その方の布となっているかつて送りだした布との再会が制作をしていての喜びとなっています。
と、笑顔で話される和泉さん。
また、自分が丹精込めて制作に打ち込む時間より、ともに過ごしてくださるお客様のお手元で育まれる時間が遥かに長いこと。
当たり前のことかもしれないけれど、あらためて新鮮な発見となり、人の暮らしが豊かなものであるようにと願い制作を続ける工芸の作り手の一人にとって心に明かりを灯してくれたこと。
そんなお客様との交流は、和泉さんの新たな制作への何よりの栄養となっているのだなと感じました。

ヒナタノオトでは3度目となる展、冬に向かう季節は初めてのご紹介となります。
新作の冬の布をたっぷりと、今展限定のamさんとのコラボバッグなど、新たな取り組みも。

RIRI TEXTILE和泉綾子さんの在店日は、10.14(土),15(日),18(水),21(土),22(日)となります。
冬の装いと、あたたかな笑顔に出会いに。
皆様のご来店をお待ちしています。

中川碧沙