スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

美しい形

2023.11.30

竹口 要 個展 -quiet-、開催中です。

初日には竹口さんご夫妻が在店くださり、閉店まで絶えることなく訪れてくださるお客様と、終始やわらかな会話が繰り広げられました。
お手持ちの作品についてお話しされる方、相談しながら作品選びをされる方。
みなさま作品との出会いだけではなくお二人との会話をとても楽しまれて、ゆっくりと時間を過ごされているのがうれしい一日でした。

工房を移転されてから初めての個展。
陶芸家にとっての工房移転は大仕事であると聞きます。
新たな工房の静かな環境の中、集中して制作をしたことから生まれた今展の作品は、
薄く繊細な仕上がりになったのだとか。
また、器の底のような細部に入念に手をかけられています。
「ぱっと見分からないような、目立たない、自己満足みたいなことなんですけど」
と控えめにおっしゃいますが、その積み重ねが確かな存在感につながっています。

「美しいものだけに囲まれていたい」
お客様との会話の中で竹口さんご夫妻が何度か口にされていた言葉が、とても印象に残りました。
そこから必然的に生み出される、美しさを追求した形。
作品に引き込まれて、気づくと目線で輪郭をなぞっています。

曲線と直線の対比が美しい、リエブレボウルの横顔。

高さや径の微妙な違いが様々な表情を見せるラトンカップ。
バランスが少し変わるだけで驚くほど印象が違います。
いくつものバリエーションから自分好みを選べるのも展覧会の醍醐味です。

印象が違うといえば、リエブレカップやスエロカップ。
同じ形のカップでも、大きさの違いで印象が異なります。
小さいサイズのカップ&ソーサーの愛らしさ。
お茶やコーヒーを入れる時間そのものが愛おしく感じられそうです。

こんなに美しい形の器、いったいどんなものを盛ったらよいのだろう?
そんなふうに思ってしまいそうですが、奥様の薫さんは、
「普段の食事で作るのはきんぴらのような普通のおかず。リエブレボウルをお茶碗として使ったり」
そんなお話もされていました。
ふつうの食卓に美しい器がある。
美しいものに囲まれていたい、という願いは「使うときに気持ちがちょっと上がるといいよね」
こんな思いにつながります。

美しいものを、と作り出された作品。
その形には、まっすぐな明確さを感じます。

多くの作品をお選びいただきましたが、1点ものなど見応えのある作品もまだご覧いただけます。
展覧会は12月3日(日)16時まで。
是非、実際に作品に触れてみてください。

文:瀬上尚子
写真:中川碧沙