スタッフブログ
ヒナタノオト日誌
転載:中本純也さん訪問記
2020.07.318月1日土曜日12時より、和歌山県龍神村の中本純也さんの夏の窯出しの作品販売を行います。
ソラノノオト → click
今年の7月、久しぶりに中本さんの工房をお訪ねする予定でした。
けれどもこのコロナ禍で、それも叶わず・・・。
新しい記事でご紹介ができませんが、2014年に訪問した時の記事を、旧ブログから一部抜粋して転載いたしました。
おおもとはきっと豊かに変わらず、ますます陶芸と日々の時間を深めていらっしゃるだろうことを思いつつ。
では、どうぞ。
(2014年5月16日記)
2001年の出会いから、「galleryらふと」での展覧会や、「工房からの風」を通して純也さんの作品と関わらせていただいて12年が経っていました。
その間、穴窯での焼き締めの陶器を長く制作されてきましたが、3年ほど前にそのお仕事から、白磁の器づくりへと変わられました。
白磁といってもいろいろな作家の方が、さまざまな器を作られています。
純也さんの白磁は、土もののような白磁、と言ったらよいでしょうか。
白磁ならではの清らかな美しさを器の中にしっかりと湛えられながら、一般的な薄くて凜とした華奢な器ではなくて、ぽってりとおおらかな白磁です。
そして、そのおおらかさの中には、純也さんが求めるやきものの姿がこめられています。
それは変化しつつ移ろい、成長していく姿なのだと思いますが、ちょうどこのタイミングで、純也さんがぜひ見てほしい、というかたちが生まれてきたのでした。
::::
昨年11月に続き、4月の半ばに純也さんと理詠さんをお訪ねしました。
お住まいと工房。
何度お訪ねしても、心がすっと整い、安らぎに満たされていきます。
純也さんがコーヒー豆をガリガリ手で挽いてくださいます。
その姿も、なんとも美しい佇まい。
ろくろ場。
薪窯。
初めて作られた白磁を見せていただいた時、とても驚きました。
それは、白磁になってもかたちが焼き締めの時とまったく同じだったから。
純也さんのかたちは揺るがないのだなぁと。
よい意味で驚いたのでした。
けれど、それは私の目の甘さだったのですね。
純也さんの中では、白磁に変わっていきながら、当初、何かしっくりきていなかったものを抱えていらしたのでした。
そんなとき、ある高齢の目利きの方に自作を見ていただく機会を得た純也さん。
その方が、「この白磁にこの厚さは必要ないんじゃないかな」
ということをおっしゃったのでした。
純也さんは、はっと気づいたそうです。
穴窯で焼成していたために、窯の中で暴れても壊れない厚さでずっと作っていたことで、手がそれを当たり前としていたこと。
けれど、窯を改良して穴ではない薪窯に変えた今、荒ぶるほどに暴れることはなくなった窯の中で、
その厚さは必要のないものであったこと。
毎日の素朴ながらも手ごたえのある時間。
そんな心豊かな暮らしと添う器を作りたい。
純也さんが求めている器の美しい姿。
そこには、白磁ならではの厚み、重さがあるはず。
そう気づいてからは、今度は純也さんが求める白磁の厚み、重みの探求が始まりました。
これは純也さんが骨董店で出会ったアフガニスタンの鉢。
このおおらかなかたちに惹かれる気持ちを自作につなげて生まれたのが今展にも出品くださる大小さまざまの鉢になりました。
こちらは、理詠さんが作ってくださったおいしい豆腐で作った豆乳スープ。
鉢がぴったりでした!
お訪ねしたときは、ちょうど筍の季節。
浅鉢に。
面取り鉢も白が映えます。
こちらは、朝ごはんに作ってくださったときのもの。
とろんとしたお皿の表情が朝の光を優しく受け止めて、きれいでした~
大鉢や大皿に盛り付けた料理をみんなで取り分けながらいただく。
そんな和やかな時間にこそ、純也さんの白磁はふさわしく思います。
いくつかの形がある中から、「我が家のおおらかな白磁」!
を見つけてほしいですねー。
そんなことをお話しさせていただいた中から、ゆるリム鉢(私が勝手に名づけたアフガン鉢から生まれた鉢)や、どら鉢(銅鑼のように底辺から口がすとんとまっすぐな鉢)、縁が立ち上がったものや、丼形のもの。。。と、さまざまな器を作っていただきました。
只今、最後の焼成が終わって、純也さん、少しほっとされたご様子。
理詠さんいわく、「ここまでは、かなり緊張してましたねー」と。
今回お持ちくださる作品を待つ気持ちが、楽しみというよりは、どこか、しゃんとあらたまったような感じになりました。
そう、祈るような気持ちと言ったらよいでしょうか。
純也さん、なかなか写真を撮らせてくださいませんが、
これはお人柄が伝わるかも。
純也さんとの出会いからその数年後のことは、
拙著「手しごとを結ぶ庭」に綴っています。
お読みいただけましたら幸いです。
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