ヒナタノオト
作品展に寄せて

北欧のゆかり展、出展作家の方からのメッセージをお届けいたします。
加藤キナさんからのメッセージをご紹介いたします。

加藤キナさんは、初日11日(土)に在店くださいます。

Q1
加藤キナさんの北欧とのご縁を教えてください。

A1
2018年・2019年とヒナタノオトの稲垣さんが企画された「日本の手工芸作家と訪ねるイサガー工房への旅」に参加させて頂きました。

Q2
加藤キナさんにとって、もっとも縁(ゆかり)を感じた北欧のエピソードをひとつ教えてください。

A2
二年かけてゆっくり知ることになったカレン・ブリクセンという作家さんのことでしょうか。

一年目にイサガー工房の体育館で「バベットの晩餐会」という彼女原作の映画を鑑賞し、翌日製本体験の際、ブックバインダーのジェスさんより’Karen Blixen’s Flowers’という本のタイトルを切り抜いた栞を頂きました。
その黄緑色の栞とともに、映画の中で「貧しい芸術家はいません」と言っていたバベットの台詞が、心のページに挟み込まれました。

二年目には、Tversted滞在中に大変お世話になった画家の今井和世さんからもぜひとお勧めされ、カレン・ブリクセンの広大なお庭のある生家まで。
それまでの道中も不思議な偶然が重なり、ちょうど訪れるべきタイミングだったのだと思います。

作り手として力の限りを尽くし、惜しみなく。
しみじみと美しいものが作りたい、そう感じる滞在でした。

この旅ではいつも、鐘の音と鳥の声を耳の奥に拾っていました。

今でも時々、記憶の片隅で、カレンのお庭に棲む小さなカラスが、キョロンキョロン と可愛らしくとびはねて遊んでいます。

Q3
加藤キナさんはどのような作品を出品くださいますか?

A3
鹿角細工三つ折長財布を2点出品いたします。

①「第二十八夜」

 風がたち、明かるい水面がもりあがって、あたかもエーテルのようにかがやきながら大きな波がうねっていきました。白鳥は頭をもたげました。きらきらした水滴が、胸や背中に青い火の粉のようにふりかかりました。夜明けの光が雲を赤く照らします。白鳥は力をとり戻しました。のぼる太陽にむかい、空をいく仲間が目ざした青い岸辺にむかって、白鳥は飛びたちました。しかしそれはひとりで飛ばねばならないのでした。憧れを胸にひめ、ただ一羽、青くたゆたう海の上を飛んでいくのでした。

②「三百年後」

 太陽がのぼり、つめたい海のあわに、あたたかい光をそそぎます。けれど、人魚姫はじぶんが死んだようには思えません。みあげると、まばゆい光のなかに、たくさんのうつくしいものが舞っているのです。そのからだはすきとおっていて、人間の目にはみえません。その声はおごそかで、人間の耳にはきこえません。気がつくと、人魚姫のからだはそのうつくしいものにかわっていました。船の上では、あたらしい一日がはじまりました。王子と花よめが、人魚姫をさがしているのがみえます。ふたりは、姫が海にとびこんだことを知っているかのように、あわだつ波間をかなしそうにみつめています。すがたがみえなくなった人魚姫は、花よめのひたいにキスし、王子にほほえみかけると、空気のむすめたちといっしょに、空にただようバラ色の雲にむかって、のぼっていきました。

アンデルセンの物語りから。

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加藤キナさんからは、お忙しい中ご無理をいって(でもとても快くお受けくださり)渾身の二点をご制作くださいました。

加藤キナさんのインスタグラムはこちらです。
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