ヒナタノオト
作品展に寄せて

加藤キナさんの鳥の歌。
前回、2019年の企画は、緊急事態宣言下で無観客展覧会として開催したのでした。
あれから3年半。
この間、加藤夫妻は、ますます鳥たちに心を寄せて、鳥に励まされるように革のお仕事を深めて来られました。
今回制作された鳥は、すべて鹿革で作られたもの。
その表情の愛らしさといったら。
3年間の鳥と交わした心の時間がそこに広がっているようです。

キナさんがメッセージを寄せてくださいましたので、中川が撮影した画像と共にこちらからご紹介させていただきます。

①「鳥のうた」のおはなし

夏のある朝、まだ日の出前から一羽の四十雀が気持ち良さそうにさえずっていました。
聴きほれて耳をすましていると、小さく「 ツピ 〜‥‥ 」とため息交じりのひと鳴きをし、しばしの沈黙。
窓の外に目を向けると、そこには赤く透きとおる生まれたての朝日が、顔を覗かせ輝いていました。
ただ純粋に、感動や喜びを鳥は声に出していることがあるという事を、初めて知った瞬間でした。

2020年の4月、コロナ禍のはじまりに無観客という形で開催して頂いた「鳥の歌」展。
めったにない貴重な経験をさせて頂き、心に残る展示会となりました。

あれから3年、鳥たちとのつきあいは深まり、様々な鳥たちが身近に棲んでいて、時々私たち人間にも話しかけていることに気づくようになりました。
彼らは実にシンプルでおおらか。
それでいて、互いに礼節を守り行動していること、豊かな感情表現を持っていることに感心し、私たちと何ら違いはないのだと考えるようになりました。

今展では、そんな彼らの様々な表情を「革の彫刻」という形で表現しています。
私たちの扱う素材は野生の鹿革ですが、可能性のひとつとして、立体の作品が生まれたのは面白い発見だと心羽ばたく思いでいます。
ぜひ足をお運びいただき、ご意見ご感想などお伺いできたら嬉しく思います。

一羽、一羽、見入ってしまいます。
愛のあるお仕事、愛の実った作品。
このほか、モビールもありますので、こちらもぜひ白い壁の会場でご覧ください。

そして、バッグとお財布のお話を。

②鹿革の行き先のおはなし

自然から生まれた木々やいきものたちは、命を全うし、からだ朽ちてもまた再びそこから新たな命の輝きが生まれる「命のバトン」の中にいます。

私たち人間も、その美しい自然の一部であるなら、この手で生み出すモノもやはり、自然に対して無理を強いることなく、きちんと戻して行けるモノでありたい‥そう希います。

素材としているのは、日本各地で山や畑を荒らし、増えすぎてしまったと駆除される野生の鹿たち。
彼らの持つ野生の自由さおおらかさ、そしてたくましさを損なわない形は何だろうと考えた時浮かんだのは、土に返せる、天然素材で作られたシンプルな鞄でした。

自分の作ったモノの未来を考えること、
行き先を考えた「ゆきさきトート」。

鹿革の枚数に限りはございますが、「ゆきさきトート」のご注文を承ります。
合わせて、永くお使い頂ける鹿革のお財布も受注いたします。

土に帰る鞄と、長く使うお財布。
必要な分を必要な方の元にお届けする、無理のない形。

納期はすべて手縫いでお仕立てする為、少し長めの来年5月を予定しております。
5月10日〜の愛鳥週間にあわせ、楽しみにお待ち頂けましたら幸いです。

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加藤牧さん、なほさん夫妻による、丹念なお仕事。
じっくり感じ、考え、作りあげていく作品は、まさに一生ものの造りです。
一生を終えたあとのゆきさきまでも想いを馳せたお仕事を、ぜひご覧ください。
会期は土曜11時~18時、そして日曜は11時~16時。
作家も在店くださいます。

また、3年半前のヒナタノオトで作成した記事も、あらためてご覧いただけましたら幸いです。
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