ヒナタノオト
作品展に寄せて

オトナのナツヤスミ展に出品くださる8名(組)の作家の方々からのメッセージと作品をご紹介いたします。

今回ご紹介するのは、埼玉県といっても群馬県の県境に工房をもつ岩田圭音(たまね)さんです。

Q1
岩田さんは、今展にはどのような作品をご出品くださいますか?

A1
継続して制作している凹版画と、その原版をブローチに加工したものを出品いたします。
今回は、黒猫など、「黒いブローチ」を数点作ってみました。
というのも、夏は湿度があり、汗もかきますから、真鍮の酸化が進みやすいのが悩ましいところ。
そこで、漆のコーティング部分を増やしてみました。
その黒いブローチ、白い服にはブローチの輪郭が、黒い服には絵柄が浮かび上がって見え、面白いのではないかと思います。

また、版画の中には、薄い雁皮紙に刷ったものがあります(2作品)。
「雁皮刷り」とは、版の形に切った雁皮紙を水に浮かせて、インクを詰めた版に貼り付け、それに糊を塗り、プレス機を通しながら別の紙に貼りつけ刷りあげる···という、少々手の込んだ刷り方です。
今回は、黒い雁皮紙に白いインクで刷ってみました。白い紙に黒いインクで刷ったものとは、また違った雰囲気になっています。

Q2
この夏、岩田さんのお気に入りの食べ物、または、飲み物はどんなものでしょうか?

A2
近所のカフェで手にいれた、地元産カモミールティー。
夜もふけてきた頃、「よし、もう少し仕事をしよう!」と気合いを入れたあと、うっかりカモミールティーを飲むと、「あ···もう···寝よう···」と思ってしまう。
これは、カモミールの真の効能か、それとも、「カモミールの効能」に従ってしまう私の心ゆえか···(笑)。
限りなく後者な気がしますが、とにかく、心が緩む香りが気に入っています。

Q3
来年、コロナ禍がおさまったら、岩田さんはどんな夏休みを過ごしたいですか

A3
もともと家の中と庭先で、ゴソゴソしているのが好きなので、今とそれほど変わらない夏休みだとは思います。
が、敢えて言うなら、ふらりと遠出した土地にある美術館に、ふらりと立ち寄ってみたいです。

版画制作から装身具へと展開させて、独自の世界を繰り広げる岩田圭音さん。
今回、新作も交えて豊かな作品群で構成くださっています。

猫と暮らすひとならではの猫モチーフに加え、
夏だからでしょうか、あるいは遠出が難しい時だからこそ羽のある鳥や蝶に想いを託したのでしょうか。
胸元、襟元に詩情豊かな作品を灯すように留めて、心を自由にはばたかせてみたいですね。