スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

さくら満ちし日

2023.03.22

春本番、浜町でもさくらがそろそろ見ごろを迎えます。
そんなやわらかな空気の中、展覧会「こまやかに」が始まりました。
糸花生活研究所(木工・織)の藤原洋人さん、真子さん、CHIAKI KAWASAKIの川崎千明さん(金工)、前川わとさん(磁器)。
ともに、昨年の「工房からの風」に出展くださった方々です。
週末には皆さんが在店くださり、にぎやかな二日間となりました。

ジャンルの違う三組のみなさんですが、共通して感じられるのは、丁寧で緻密なプロセスが支える、美しい佇まい。

糸花生活研究所の藤原さんご夫妻は、今回手芸の道具を中心に制作くださいました。
手しごとのものが、自然に生活の中にある暮らしを提案する藤原さん。
木工の仕事を洋人さんが、織りと絵は真子さんが担い、二人の手しごとが重なってできあがる作品。
針入れのペンダント、ピンクッション、ゆびぬき・・・。
随所にお二人の「こまやかさ」が。
見る人の口からは「わあ!」という感嘆の声がこぼれます。
作品の形の細部には、真子さんの絵が引き立つよう、洋人さんがさりげなく施した工夫が。
また、針入れのペンダントのさげひもは普段はナチュラルカラーで制作されますが、今回はヒナタノオトの空間や春という季節を考えて、やわらかなカラーバリエーションの作品を制作くださいました。
針仕事をされる方の傍らにそっと寄り添うお二人の手しごと。
手芸が特別得意ではない私でも、お道具をそろえて手を動かしたくなります。

動物のモチーフの装身具を中心に制作をされる川崎千明さん。
今回もさまざまな生き物が。
動物はもちろん、鳥や海の生き物もいます。
動物園や写真で観察して生み出される川崎さんの装身具。
それぞれの生き物の姿や動きの特徴をとらえた作品からは、金属でできていることを忘れるようなリアリティを感じます。
動物たちのまあるい形にときめく、という川崎さん。
豆柴の赤ちゃんのふんわりとした姿、冬の寒さの中のふくらすずめなど、川崎さんの愛情のこもった視点があらわれているようです。
個人的には、コアラが木にしがみついて眠っている姿がとても愛らしく、見ていてこころがほどけます。
皆様もぜひ、お気に入りの作品をさがしてみてください。
作品に添えられたタイトルやキャプションもとても楽しいので、作品とともにお楽しみいただけますように。

やわらかな色と愛らしい形の前川わとさんの作品。
ギャラリー空間に春のやさしい風を運んできてくれるようです。
「かわいい!」という言葉が思わずこぼれる作品は、とても緻密なお仕事に支えられています。
色のついた磁土を何度かに分けて型に流し込むことで層を重ね、ろくろで形を整え、文様を削り出す。
何層にも重なった磁土を削ることで、下の層の色が見えてきます。
そうして生まれる色彩と立体感。
出来上がった作品は、ただかわいいだけではない凛とした空気を持っています。
ご自身も中国茶をたしなまれるという前川さん。
急須や茶器もご覧いただけます。
愛らしいお茶道具とともにすごすお茶時間は、一層楽しい時間になりそうです。

残り少なくなっている作品もございますが、それぞれの作品から感じられる「こまやかさ」。
ぜひ感じにいらしてください。

文 :瀬上尚子
写真:中川碧沙