Editor's voice

稲垣 早苗

水の巡り

2020.04.14

にしむらあきこさんから原稿をいただきました。
お願いをしていた予定よりも早く。
今、書くべき、読んでもらうべき、という想いとともに。
春の日 → click

9年前の春の日。
私はあきこさんとは出会って数年。
それほどやりとりを重ねていたわけではありませんでした。
けれど、震災ののち、SNSを通じて伝わってくるあきこさんが、ごめんね、正直ちょっとこわかった。
大丈夫だろうか、と思った。
でも、私は思っただけで、ハタノワタルさんはするりと手を差し伸べていらした。
そして、あきこさんはそれにするりと応じて、今のあきこさんへの道を歩み始めた。

今の眩しいあきこさん。
心が闇に引っ張られてしまいそうな時を経て、今、こうして立っている。
そして、その後も、何度も闇に引っ張られそうになったことだろう。
私なんか想像もできないくらいに。
けれど、その都度、光に向かい、自らの光を増して、立ち続けている。

そして今、このような文章を書き、送ってくれた。
泣かせようなんてケチな心、かけらもないから、泣かされる。
いつも。
あきこさんの文章のキレのよさは、生き方のキレのよさだ。
惜しみなく。
私は、あきこさんの姿、生き様からいつもこのことを教えられている。

+++

熊谷茜さんからも原稿が届いた。

水分が見える人

なんて魅力的なタイトル。
そして、なんとも、茜さん語録(笑)感!
→ ckick

庭仕事をしていると、巡り巡る環を豊かに感じます。
落ち葉を掻いて、コンポストに入れて、土に還ったら花壇に戻す。
そのふかふかの土が、草花を豊かに育むのだと。
でも、水で茜さんのような循環を感じたことがなかった。

「雲さん、ありがとうね。これからもよろしくね。またどこかで会おうね。」

かご編みという、水と密接にかかわる仕事を手にした茜さんの
『きっとあの水分がときどき私のそばを巡るのだ。』
という感覚。
この文章に出会った日は、私にとって、「雲さんありがとうね記念日」となりました。

あきこさんも、茜さんも水に触れてものを生み出す手しごと。
和紙造形とともにある水。
かご編みとともにある水。
どちらも、工程は違うけれど、かたちを自由にさせるちからを与えてくれるもの。
水に敬意をもって、水とともにある人からの瑞々しい文章、ぜひお読みください。


Writer

  • 稲垣 早苗
  • オウンドメディア「手しごとを結ぶ庭」を企画編集しています。
    「葉」のコンテンツは、「言の葉」の「葉」。
    工藝作家やアーティストの方で、私がぜひ文章を書いてほしいと願った方にご寄稿いただきました。

    わりとはっきりとテーマをお伝えした方、あまり決め込まずに自由にしてほしいとお伝えした方、、、いろいろですが、私なりに「編集」に取り組んでいきたいと思います。

    ひとつひとつの「葉」が茂り、重なっていったとき、どんな樹形が見られるでしょうか。
    今、答えを持っていないことが、ひとしおうれしく感じられます。

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