スタッフブログ
ヒナタノオト日誌

ようやく会えた

2023.04.05

流氷の上に気持ちよさそうに体を伸ばしたり、
手足の力を抜いて、安心したように横たわる白クマ。
どこへ向かうのか、子供を背中に乗せて歩みを進めるものもいます。
さくら舞う4月、大住潤さんの展覧会「巡りあえたさきへ」が始まりました。
今回、作品のご購入を抽選方式とさせていただきましたが、皆様にご理解をいただき大きな混乱もなく、穏やかな熱が会場を包む最初の週末を終えました。

初日の4月1日には、大住さんも在廊くださいました。
以前から展覧会に足を運んでくださる方。
SNSでご覧になっていて、今回初めて作品を直接目にするという方。
大住さんの作品に「ようやく会えた」とおっしゃる方も。
それぞれに作品を味わい、作者と会話を楽しんでいる姿を見ていると、展覧会はお客様とともに完成するのだと、実感します。

また、会場ではいとうゆりさんの制作による大住さんの工房の映像を流し、制作の様子を垣間見ることができます。
道具と木が奏でる音が静かに響く空間。
決して張り詰めた空気ではなく、真剣さとやさしさが溶け合った時間が流れています。
さまざまな熊の姿は、写真や映像を見るほか、ご自身のお子様の様子が参考になることもあるのだとか。
どこか親しみを感じられるのはそんなところに理由があるのかもしれません。

18時からはギャラリートークを行いました。
木工の仕事にたどり着くまでの、若き日の(まだ十分にお若いのですが!)お話や、アイヌの手工芸品との出会い。
その作り手に師事したいと思い、作り手がどこに住んでいるのかも知らぬまま、北海道まで探しに向かったこと。
「工房からの風」への出展と、熊が制作の中心となったきっかけ・・・。
ひとつひとつの巡り合わせが織りなされて、目の前の光景がある。
来場された方の想いも加わって、穏やかで充実した時間となりました。

木彫りの熊たちから感じる息づかい
用途や機能を超えて、心を満たすものの力を感じていただける空間になっていると思います。
会場には、大住さんへのメッセージをお書きいただく、小さなノートをご用意しています。
思い思いの時間を過ごしていただけますように。

文 :瀬上尚子
写真:中川碧沙