ヒナタノオト
作品展に寄せて

『七実さんと出会って、30年以上が経つ。
当時、私が勤めていた工藝ギャラリーの搬入出のアルバイトに、
陶芸を学ぶ学生の七実さんがやってきたのだった。』

これは、今春3月に発行された婦人之友4月号に掲載された記事の一文。
「つくり手のモノサシ」という連載の4回目で、大野七実さんを取材させていただいたもの。
この記事に合わせて、4月早々、桜の季節に自由学園明日館で作品展を開く予定でした。

広やかな明日館での展示に向けて制作に入った七実さん。
貼花技法の作品をはじめ、大作の制作も進めていた中、緊急事態宣言のもとに開催が無期延期となりました。

急遽、ヒナタノオトでの6月の開催に変更をしたことで二ヶ月の制作時間が加わりました。
その結果、今展は七実さんの制作発表の中では最大数の作品と充実の内容に!
加えてお姉様の八生さんが「ちいさな絵画」として、いきいきとした草花や生き物を描いて出品くださいました。

連日豊かなお客様に恵まれたこの会も、この土日で終了です。
(土曜日 13時~18時 日曜日 13時~16時)
土曜日には、おふたりともに数点ずつ追加作品をお持ちくださる予定です。

七実さんとの30年の時間の中でも、会えない数年がありました。
七実さんが体調を崩されて制作を休んでいた時間。
その間も工房を手放さず、それはひとえに作ることを人生から手放さず、
工房にある小さな庭を丹精し続けて、今という時間につなげてこられたのでした。

『自分が荒れると庭も荒れる。
庭を整えると自分もすっきりとする。
苦しかった時、姉は言葉ではそう言わなかったけれど、庭を通してそのことを教えてもらった気がする』
(婦人之友4月号)

今振り返ってみれば、作る手を止めて、庭を丹精していた時間は、
七実さんの心そのものを丹精する時間になっていたのだと思います。
6年半ほど前、制作再開後初の七実さんの個展に、
「はぐくむ時間」と名付けたのはそんな想いからでした。

うつわなないろ
ひとりの作家の種の時から、なないろに豊かに開いた花々へ成長された姿と出会えたこと。
その花々のような作品を、まさに庭に咲き誇るようにギャラリーに展示していただけたこと。
言葉にできないほどの幸福を感じます。

自分に与えられた時間の中で、このような幸せをかみしめ、
さらに他の方々とこの喜びを共有し、共鳴できたとしたら、これ以上のものはないのではないか。
そんなことを想いながら、残りの二日間を迎えます。

土日、七実さん、八生さんも在店予定です。
土曜日は、本間由美子と稲垣早苗
日曜日は、宇佐美智子、稲垣未知、稲垣早苗でお迎えします。

店内、安全、安心してご覧いただけるように配慮いたします。
店内での人数を調整するため、一定数を超えた場合はご入店をお待ちいただく場合がありますことをお許しください。

すでに旅立った作品の展示動画、先日と同じものですが、こちらにも貼っておきます。