ヒナタノオト
作品展に寄せて

今日は「梅田かん子 et craft 年迎えの愉しみ」の初日でした。

梅田かん子さんは在店出来なかったのですが、et craftの平井綾子さんが在店くださいました。

そもそも、et craftさんとの出会いは、今年通常開催が叶わなかった「工房からの風」。
出展予定者でいらっしゃったのでした。

出展が決まって早々に面談に来てくださったおふたり。
未だコロナ禍がこんなになってはおらず、出展いただけなくなるなんて思ってもみなかった頃。
(なんだか、遠い昔話のよう・・・ですね。。。)

その時に、すっかりそのお仕事に惚れ込んでしまったのです。
ああ、こんなに真剣に漆の仕事に取り組んでいる若いご夫婦かいるんだなぁ。
そして、作品がとてもいいなぁと。
10月の「工房からの風」で、どのような作品群を見せてくださるのか、
ほんとうに楽しみだったのです。

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平井岳さんは1988年、京都生まれの32歳。
京都の美術工芸高校で漆を学び始め、
東北芸術工科大学工芸コースでも漆芸を専攻。
卒業後は、漆工芸 荻房に所属して、茨城県の奥久慈で勤しみました。
福島県出身の綾子さんとは同じ漆芸を専攻する大学の同級生。
岳さんの独立後、2016年におふたりで「et craft」を福島県に設立しました。
昨年には、漆掻き技術保存会主催の長期研修参加し、
素材である国産漆の収穫にも励んでいらっしゃいます。

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在店時には、岳さんの漆掻きの様子を映像にしたものをipadで見せてくださいます。
ほんとうに気の遠くなるような作業。
それを黙々と行う岳さんの姿の尊さ。
ホームページにもあります。
→ click

少し画像で作品をご紹介しますね。

上段と下段の色合いが違うのはわかりますでしょうか。
上段は栃の木に生漆(きうるし)を塗り重ねたもの。(着色していないもの)
下段は栃の木に黒い顔料を混ぜた漆を一度塗って、その上は生漆を塗り重ねたもの。
共に栃の木独特の美しい木目が、とろりと輝く漆の下から見えてなんとも美しい仕上がりです。
この艶に初めて見せていただいたとき、一目惚れしてしまったのでした。
国産の上質な漆ならではの何とも言えないまろやかな艶は、et craftさんの漆器の特徴です。
(下段の黒い方も実際はもっと木目がみえています)
これは6寸の取り皿。
銘々皿によいですね。
ほかに7寸もあります。

こちらが基本の汁椀。
漆器は使うほどに艶めき育つような美しさが特徴ですが、
初めからこのように艶めいていたら、使い込んだらどれほど艶が増すのでしょうか。

こちらは大ぶりな椀。
お雑煮や小盛りのおうどんなどにもいいですね。
木地はケヤキ。
左側が生漆(溜め塗り)、右は木地に黒漆を一度塗り、
その上に白漆で刷毛目をつけて、仕上げに生漆を塗ったもの。

ころん、と丸みがなんとも愛おしい小鉢。
菓子鉢はもちろん、ヨーグルトもおいしそう。

綾子さんお薦めはご自身も愛用中のカップ。
あたたかいものを入れても手には熱すぎず、保温力はあってひとしおお気に入りなのだそうです。

上質のお盆を探している方にはぜひお薦めです。
お敷のようにも使えるフラット感もあります。

これらは木地に生漆で仕上げたシリーズ。

大きく分けてもう一つのシリーズが「蒔地(まきじ)技法によって仕上げられらもの。
木地に漆を塗って、そこに地の粉(じのこ)
と呼ばれる珪藻土を蒔くようにして塗り重ねて作られるもの。
硬質な仕上がりなのでひときわ丈夫さがますものです。
マットな表情がモダンですが、プラスチックにはない奥行きのある色調、風合いが美しい漆器です。

et craftでは、裏側などはわざと蒔地をせずに木の表情を残したデザインにしていて、
そのようなところも心憎いのです。
(蒔地の作品群の画像、後日・・・)

写真ではお伝えしにくいのですが、お皿のふち、エッジの部分のデザイン、角度、太さ・・・。
デザインが秀逸なのです。
これは使っているうちに飽きが来ず、使うほどに愛着が増すための
重要なひとつだと思っています。

綾子さんがモダンなデザインをけん引し、岳さんが漆や漆器本来の美しさの核を持ち、
おふたりでバランスをとることで、本質的であってモダンな美しさを発揮しているet craftの漆器。
今年最後の企画展でお薦めしています。

あまり価格のことを言うのは控えているのですが、
国産の漆で仕上げている漆器とは思えない設定と思います。
独立されたばかりで、
これから着実なお仕事を重ねていかれるだろうおふたりのスタートラインの器、
この機会にぜひお使いいただければと思います。

13日日曜日は綾子さんが在店。
来週末は、岳さんが在店予定です。
おふたりから直接、漆のお話し、器のお話し、お聞きいただければ幸いです。

追記
ちょうどNHKの「美の壺」、漆でしたね。
うるわしの漆
冒頭、漆掻きも出てきます。
再放送は[NHKBSプレミアム] 2020年12月19日 午前6:45 ~ 午前7:15 (30分)
NHKオンデマンドでも配信中です。