店主ブログ
日々の芽吹きの記録

それぞれの庭

2021.01.19

このサイト「手しごとを結ぶ庭」を訪ねてくださる方々の庭では、今、どんな光景が広がっているんでしょう。
オンラインストア「ソラノノオト」を通して発送させていただくご住所。
北海道から沖縄まで。
訪ねたことがない、見知らぬ地名。
全国津々浦々から、工藝、手仕事、作家のことに関心を寄せてくださる方々が、
この「手しごとを結ぶ庭」、そう「庭」を訪ねてくださると思うと、なんとも胸の広がる想いがします。

私は、千葉県の東京にほど近い街にある集合住宅と、房総の里山にある家とを行ったり来たりの二地域居住を30年近くしてきましたが、
房総の春の足音は、穏やかな日差しと共に、ささやくような歌声が少しずつ近づいてくるみたいにじんわり進んできます。

裏庭では、毎年のことわりのようにお正月に一輪の白梅がほころびます。
そして、先陣を切ったせっかちな幾つかの花のほかは、枝先でぐんぐん蕾を膨らませていきます。
今日の枝先は、このような感じ。

温暖な房総といえども、ここのところ寒風の強い日もあって、薪ストーブに薪風呂の家では、火の用心に気を使います。
野にはこれまた気の早いふきのとうにも会えそうだけれど、春との再会は少しずつにしておきたいような気も。
朝起きたら出会う、降りた霜のうっすらとした銀世界も、あと何度かは見てみたい。

寒い寒い、と言いながら、そんなことを思っていると、
今週公開の富井貴志さんからの原稿と画像が届きました。


(画像 富井貴志さんより)

雪!
ゆき!
ユキ!

2メートル84センチ!!!
もうビックリマークでしかありません。
一冬過ごした金沢でも、そんなに積もったことはなかった。
想像を超えた白の世界。

富井さん曰く
「うちのあたりは雪の量は本当に多いところに比べたら、まだまだ可愛いものです」
ですって!

じゅうぶんに豪雪地帯と思われる地域に生まれ育った富井さんは、学業や木工の修行ののちに、望んで再びこの地に帰ってきたひと。
「たいへん」ということ、「不自由」ということの捉え方が、人生に対して肯定的にして重層的。
十全に生きる意欲が、富井さんの日々や作品に満ちているなぁとあらためて感じた文章を寄稿いただきました。

富井さんが幼い頃にご両親がしてくれた雪仕事を、今は富井さん夫妻が担い、それを子どもたちがはしゃぎ、喜ぶ。
『子供たちにもできる限り雪の楽しさや美しさを刷り込んでおけば、将来この土地の魅力をきちんと理解してくれるだろう』
と思いながら、重労働のあとには、「自家製かまくら」で火を囲む。

ひとは何の縁かどこかに生まれ、その土地の自然を受け入れ、包まれ、対峙し、工夫しながら生きていく。
そのことを表面的にとらえるか、内側から思考するかで人生はずいぶん変わっていくのだろうなあ。
富井さんの文章からそんなあれこれを想いました。

富井さんの次回の「葉」へのご寄稿文「降りつづく 変わり続ける」は、1月21日木曜に公開です。
(タイトル、そこはかと物理っぽいですよね!)

富井貴志 「葉」 → click